不動産が安いのか高いのかを判断するためには正しい査定知識が必要です。
前回までは戸建住宅の積算評価について書きました。
今回の記事では区分マンションの評価についてわかりやすく書いていきます。
もしあなたが継続して不動産投資をしていくつもりなら
正しい査定知識を身につけてください。
また自宅の購入や売却を考えているあなたも
売出価格やローン審査にとらわれずあなた自身で正しい査定をしてください。
モチはモチ屋ではありません
銀行や不動産業者にまかせずあなたの身はあなたが守るのです。
ぜひ参考にしてみてください。
(僕は不動産鑑定士ではありませんので鑑定評価基準にそった査定方法ではありません。ただ個人で行う不動産投資や自宅購入/売却時において鑑定士ほどの知識は必要ありません。)
目次
簡易な机上査定方法【ファミリーマンション編】
マンションの登記について
日本の不動産は土地と建物が別々に登記されます。
土地と建物を分離することができないマンションについても別々です。
総戸数の数だけ所有者がいる
マンションの登記はどのようにされるの?
まず建物については
区分建物という形で登記されます
区分建物とは一棟の建物の中の部屋をそれぞれ独立して利用でき
部屋、所有者ごとに登記簿謄本があり自由に売買できます。
土地については敷地権もしくは共有土地という形で登記されます。
敷地権とは区分建物と一体化した土地にたいし
建物と分離して処分できないようにする権利のこと。
マンションを購入すると区分建物と同時に土地の敷地権も所有することになります。
敷地権は昭和58年の区分所有法改定によってできました。
それ以前に建てられたマンションは共有土地という形のマンションが多くみられます。
敷地権も共有土地も区分建物と一体化した土地にたいし
持分○○分の□□という形で登記されます
マンションの積算評価について
戸建住宅の査定でつかった積算評価ですが
土地と建物を分離できない
区分マンションにも使えるの?
実は使えます
使えるどころかかなり利用されています。
銀行の審査や鑑定評価でも区分マンションの積算評価をおこないます。
しかし実勢価格の把握のためには
あまり意味がないです(私見です)
土地と建物を分離できないという理由もありますしより実勢価格を把握するうえで
簡単な査定方法があるからです
また別の記事で書きますが収益評価についても少しふれておきます。
区分マンションの収益評価は投資用ワンルームには有効ですが
ファミリータイプにはあまり効果がありません。
ファミリータイプの収益評価は実勢価格よりも安くなることがほとんどです。
安くなる理由はファミリータイプの面積が広いから。
収益評価のもととなる賃料の単価は面積が広いほど低くなります。
ワンルームの家賃は面積がせまいぶん総額は安いですが
ファミリータイプよりも単価を高く設定できます。
床面積の広いファミリータイプは賃料単価を高く設定できないぶん
収益評価は安くなるのです。
取引事例比較法
区分マンションの実勢価格を把握するうえで簡単な査定方法は
取引事例比較法です
対象不動産と条件が近いマンションの取引事例をあつめ
必要に応じ補正をおこない比較する方法です。
取引事例比較法によって求められた価格を比準価格といいます。
とくに難しい手法ではなく前の記事の土地評価と同じことを
区分マンションでもおこなえばいいだけです。
対象不動産と同一マンション内に事例があれば一番ですが
なければ周辺の類似マンションから事例をあつめることになります。
個別性を補正する
区分マンションの主な補正項目は
- 方位
- 階層
- 位置
になります。
どの項目も大体1~5%くらいの格差になります。
方位は部屋の向き。(採光面)
同じマンションでも北向きの部屋より南向きの部屋のほうが価値は高いですよね。
階層による格差はマンションの中間層(10階建のマンションであれば、5・6階)を
標準階として格差をつけます。
標準階から1階上がるごとに+1%くらいの格差をつけていき
逆に1階下げるごとに-1%くらいの格差をつけます。
最上階はペントハウス(最上階の特別仕様の高級住戸)であれば
さらにプラスしてもかまいませんし
1階の場合は湿気がひどくカビ、結露の懸念があれば
さらにマイナスしてもかまいません。
位置は角部屋の場合。
角部屋は中間部屋にくらべて採光面が多くなりますし
隣りの部屋が一方面だけになりますから騒音も少なくなりますよね。
リノベーション
最近は古いマンションの内装をリノベーションして
価値を高めてから売却する手法がふえています。
鉄筋コンクリート造のマンションは耐用年数が40年以上ありますから
新築から20、30年たって内装がボロボロだったとしても、
リノベーションすれば十分利用できますし流通性も高くなります。
ただしリノベーション物件は
とうぜん売出価格には業者の利益が含まれていることに留意してください。
査定例
わかりやすくするため査定対象マンション内にふたつの事例があるとして
全ての部屋が同じ広さで同じ向きとします。
図1.をご覧ください。
査定条件をまとめると
- 事例①は10階、リフォーム経緯はないが内装美麗、単価109万円/坪の売り物件
- 事例②は6階、リノベーションずみ、単価141万円/坪の売り物件
- 対象は3階の角部屋、リフォーム経緯はないが内装美麗
になります。まずはふたつの事例を補正します。
①.事例①は売出価格が10%高く設定されているとして
最上階のひとつ下の10階のため階層による格差を+4%とします。
単価109万円/坪が補正され標準価格は単価96万円/坪になります。
②.事例②は売出価格が10%高く設定されているとして
中間層の6階のため階層格差はなし。
ただリノベーションずみの物件で不動産業者が売主として販売しています。
業者利益が売出価格の15%含まれているとして
さらにリノベーションにかけた費用は300万円(売出価格の10%)とします。
単価141万円/坪が補正され標準価格は単価104万円/坪になります。
ふたつの事例に若干の幅はありますが平均をとって単価100万円/坪を標準価格とします。
つぎに対象不動産の補正です。
③.対象は3階のため階層格差は▲3%ですが
角部屋の効用が+3%あるため補正率は±0になります。
④.よって対象の比準価格は
まとめ
ファミリータイプのマンションの場合、
実勢価格の把握は積算評価や収益評価よりも
取引事例比較法による比準価格が有効ですし手法も簡単です。
気になるマンションがあればぜひ一度ためしてみてください。
また売出物件の広告をみると
リノベーションの内容がこまかく表示されていると思います。
費用はどれくらいかかっている?
業者利益はどれくらいふくまれている?
か想像してみるのもけっこうおもしろいですよ。
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