前の記事で日本の不動産取引の透明性について書きました。
また不動産は情報が命であることについても書きました。
情報は人から人に流れネット(市場)に出回る前に水面下で取引される。
出回る前の情報を入手するためには情報をもっている人と多く出会うこと。
また不動産を買う意思があることをしめすことが重要だと書きました。
そして情報を手に入れたときその不動産が安いのか高いのか判断するためには
この記事では不動産の査定方法についてわかりやすく書いていきます。
もしあなたが継続して不動産投資をしていくつもりなら
正しい査定知識を身につけてください。
また自宅の購入や売却を考えているあなたも
売出価格やローン審査にとらわれずあなた自身で正しい査定をしてください。
モチはモチ屋ではありません
銀行や不動産業者にまかせずあなたの身はあなたが守るのです。
ぜひ参考にしてみてください。
(僕は不動産鑑定士ではありませんので鑑定評価基準にそった査定方法ではありません。ただ個人で行う不動産投資や自宅購入/売却時において鑑定士ほどの知識は必要ありません。)
目次
簡易な机上査定方法【土地編】
坪と㎡(平米)単価
日本の不動産業界ではよく
”坪” という単位が使われます
ひと坪は畳2枚分3.3㎡のこと。
厳密には少し違うようですが ㎡(平米) × 0.3025 = ”坪” になります。
なぜ0.3025なのか、なぜ ㎡ にまとめないのか、 ”坪” の由来はなんなのか、
などはネットでいろいろでてくるので調べてみてください。
(すみません。僕はあまり興味ありません。)
そして査定するときは必ず総額を坪もしくは ㎡ でわって
査定方法の種類
不動産の査定方法はいくつかありますが、
個人でおこなう不動産投資や自宅購入/売却時に必要な査定方法は
今回は査定の基本である積算評価を説明していきます。
ちなみに収益評価は
不動産から生まれる果実(家賃や地代)をもとに利回りを使って査定します。
直接還元法やDCF法などにわかれます。
積算評価とは
積算評価とは土地と建物を別々にいまの価値で評価し
それをあわせた総額のことをいいます。
前の記事でも書きましたが土地と建物を別々に評価する理由は
日本の不動産が土地と建物を別々に登記するからです。
税金も別々に課税されます。
なので戸建住宅の価格はあくまでも総額であって
実際には土地と建物の内訳が存在します。
そして積算評価によって
土地評価
公的指標
一般の人にとってもっとも身近な土地評価は
年1回公表される地価公示ではないでしょうか。
毎年日本全国(2019度は26,000地点)の地価を公表し
日本でもっとも値段が高い地点や
変動率が大きかった地点がニュースになっていますね。
ほかには国税庁が公表している相続税路線価や
市町村が公表している固定資産税路線価などがあります。
この路線価は路線(道路)に対して平米あたりの単価を公表しています。
これらの公的指標は国土交通省HP、国税庁HPまたは
一般財団法人資産評価システム研究センターの全国地価マップで
確認することができます。
おおよそですが地価公示を100%とした場合
- 地価公示が100%
- 相続税路線価が80%
- 固定資産税路線価が70%
の割合で課税されることになります。
実勢価格
公的指標はあくまでも課税を目的にした価格であり目安にしかなりません。
実勢価格はまた別になります。
最近ネットで自動で無料査定してくれるサイトがありますが
とくにそれが悪いとはいいませんがあくまでも目安です。
プロの業者だと地価公示も路線価も一切みないという人もいます。
実勢価格とは関係ありませんからね。
実勢価格をもっとも知っているのは地元の不動産業者です。
あたりまえですが地元業者はその地域の不動産を毎日みていますから
だいたいの相場や地価の変動を感覚的にわかっています。
しかし
その方法をいまから説明していきます。
不動産情報(取引事例)を探す
まずネットで査定対象近くの土地の不動産情報(取引事例)を探してきます。
探すときのポイントは周辺の標準的な土地をイメージすること。
イメージした標準的な大きさに近い事例を探してきます。
たとえば30坪の住宅が建ち並んでいるなら30坪に近い事例を探してきます。
またなるべく土地の形状が整形なものを探します。
前の記事でも書きましたが不動産にはそれぞれ個別性があります。
実勢価格を把握するためには
個別性が少ない標準的な事例を探してくることが大切です。
更地の事例が少ない場合は戸建の事例でも大丈夫です。
ただ戸建の事例を探す場合はなるべく建物が古いものを探してください。
耐用年数をこえた古い戸建は価格のほとんどが土地価格になるからです。
新しい戸建の事例でも土地の査定は可能ですが
その場合は次回の記事で書く
建物価格を事例の総額から引いて土地価格を想定することになります。
周辺の事例は1つではなくできれば3つ以上集めてください。
そして総額を坪もしくは㎡単価になおします。
個別性を補正する
つぎに集めた事例の個別性を補正していきます。
おもな補正内容を書きますので目安にしてください。
- 規模が大きい▲5%~30%
- 形状が悪い▲5%~30%
- 角地+3~5%
- 行き止まり道路に面する▲5%
- 嫌悪施設が近い▲5%~20%
- 道路との高低差がある▲5%~15%
補正率に幅がありますが事例の状況によって判断します。
たとえば道路との高低差が1m未満であれば▲5%くらいですが
高低差が2m以上の物件であれば▲15%くらい必要になります。
それ以外にもあなたが思いつく個別性があれば補正をおこなってください。
たとえば駅までの距離によってもそれぞれの物件に差はあります。
これらの補正は個別性のある事例を標準的な土地になおすため作業です。
つまり仮に、
標準的な土地が30坪の大きさだとして
集めた事例が50坪で単価50万円/坪だった場合
その事例にはすでに規模大による▲補正が含まれていることになります。
よって標準的な単価は50万円/坪以上と考えるべきです。
(規模大▲5%とすると標準単価は坪52.5万円/坪になります)
査定例
具体的な査定例を書いてみます
まず図1.をご確認ください。
①まず査定対象近くの標準的な土地をイメージします。
(この例では50坪が標準的とします)
②ネットで事例を探してきます。
- 土地50坪
- 売出価格5,000万円(単価100万円/坪)
- 角地
- 形状が少し悪い
- 線路至近
とします。
③の通り事例の条件にあわせた補正をすると事例の個別格差は103%になりました。
(売出価格は+10%としました)
④事例の単価100万円/坪は標準的な土地よりも103%優れているので
103%で割りもどし標準単価は97万円/坪になります。
つぎに対象不動産の査定になります
図2.をご確認ください。
- 土地50坪
- 形状がかなり悪い
⑤対象の土地も50坪ですが形状がかなり悪く間口が狭い物件とします。
(旗ざお地とか路地状地といいます)
⑥対象の補正を形状▲20%とします。
⑦周辺の標準的な単価は97万円/坪でしたが
対象は標準的な土地よりも▲20%劣りますので、
標準単価97万円/坪×80%=78万円/坪が対象の適正な単価になり
査定額はだいたい3,900万円となります。
取引事例に対して1,100万円ほど安い結果になりましたが
取引事例は売出価格であること
対象地は旗ざお地であるという個別性でじゅうぶん説明がつきますよね。
まとめ
今回は積算評価のうち土地の査定方法について書いていきました。
査定のポイントは
ことです。
次回は建物の査定方法について書いていきます。
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